フェラーリ360challengeエンジン製作記録・・・2
エンジンは戸田レーシングへ!
そんなわけでエンジン製作の話が進み、一度戸田レーシングの方がKSPに来てくれて打ち合わせしておよそのチューニング内容を決めたところで実際どの程度の破損状況なのか内部は355とどの程度異なるのかエンジンを開けて検証してみようという事になりエンジンを戸田レーシングへ運ぶ事になりました。
戸田レーシングは岡山県。気軽に運ぶ距離じゃないから木枠梱包で送るのかと考えていたら戸田レーシングの担当さんが、「引き取りに行きますよ!」とのことで2010年4月18日岡山ナンバーのハイエースのバンでモデナのエンジンを引き取りに来てくれました。
これは申し訳なかったです。。でも助かりました。。
エンジン状況確認と打ち合わせのため戸田レーシングへ
4月の終わり頃戸田レーシングさんから電話があって「エンジンがバラバラになったので見に来ない?」とのこと。
そりゃもう是非に。。
というわけで連休明けの5月17日、岡山の戸田レーシングに向かいます。
戸田レーシングは倉敷の町から20キロほど離れたところにあります。
辺りは畑が広がる牧歌的なところで何故ここに最新のレーシングファクトリーが?と思えるような環境。
しかし、一歩社屋に足を踏み入れればそこはもう、機密を扱う厳重管理の「企業」
スタッフが持つIDカードを翳すとドアのロックが開くような厳重さ。
長い廊下の両側にドアがたくさんあってそんなドアのひとつを開けて中に入ると10畳くらいある真っ白な広い部屋の中でモデナのエンジンがバラされていた。
この部屋にはこのエンジンだけしか存在していないから各ドアの向こうの部屋では 様々な秘密作業を行っているんだろうか。。
屋内はとてもじゃないけど写真を撮って良い雰囲気じゃないのでエンジン関連だけ撮影。
modenaエンジン1機分のパーツ
エンジンには封印。
これはワンメイクレース車両用エンジンなので勝手にバラせないよう封印が存在。
もちろん レギュレーションとは海外で行われている本当のチャレンジカーワンメイクレースでの話し。
かつて日本でも行われていたが・・・
当然ながらチューニングカーにレギュレーションは無いので取り外す。
クランクシャフト、コネクティングロッド、メタルなど 目視では損傷は全く見られない。
シリンダーブロックシリンダー壁面などもコンディション良好レースで酷使している割には何も問題は起きていない。
排気バルブの色もスゴイけど吸気バルブは金色に焼けていてカーボンが殆ど堆積していない。
かなりの高温で動作していた結果でしょう。
物理的に問題は起きていないしこの高価なバルブを40本も交換すると恐ろしい費用がかかりそうなので今回は再利用します。
ピストンも燃焼室側にカーボンの堆積が殆ど無くてレースでの使用を物語っている。
ちなみに真ん中の白いピストンが今回トラブルを起こした左バンクフロント側のピストン。
燃焼室にクーラントが入ってきたので温度差でスチーム洗浄?されたんだろうか?!
ピストンは新設計して交換するのでこれらは使わない。
最後に記念品としてどこかに飾っておこうか。
これが今回のトラブルポイント ガスケット抜け。
マフラーにインナーサイレンサーを入れて全開爆走すると排気が抜けていかないのでエンジンが高温になりガスケットが抜けるのを実証してしまいました。。
しかし、ガスケットが抜けているのは吸気バルブ側ですね。燃焼室内でナニが起きていたんだろう?
それにしてもこのガスケットは形状も素材も今風ではない。
戸田の方も 「まるで2T-Gの純正みたいなガスケットですね・・」とのこと。
ヘッドガスケットはピストンのボアに合わせて新設計したメタルガスケットを作って使う事になります。
シリンダーヘッドは問題なし。ついでなのでトラブルは起こしてない他のエンジンパーツも見ていく。
それにしてもスチーム洗浄された一番右の燃焼室が可笑しい。。
可変バルタイ機構は何故か排気側だけ。
吸気側にも仕込める構造にはなっているんだけど採用されなかったみたいです。
これは、ドライサンプのオイルポンプエンジンからオイルを集めてタンクへ送るスカベンジングポンプ2機とオイルタンクからオイルを吸入してエンジンへ油圧を送るエンジンオイルポンプ1機が組み合わされている。
この造りはまるでレーシングエンジン。
ちなみにピストンはマーレ(ドイツ) チタン製のコネクティングロッドはパンクル(オーストリア)
どちらも世界の一級品。要不要ではなく様々な部分で高級部品がおごられている。
フェラーリも 360まではこの様なレーシングエンジンの造りだったそうで430からは合理的なレクサス的造りになったとか。
チタン製コンロッドはこのまま使うけれど、ピストンはボアと圧縮比を考慮して戸田レーシングで製作します。
クランクシャフトもストロークを上げて排気量を稼ぐため製作。カムシャフトも圧縮比を考慮して作用角を変更しハイカムを作ります。
他にもガスケットの金型を起こしたりクランクシャフトとシリンダーのメタルを作ったり作らなければならない部品は本当に多数になります。
特にクランクのメタルに関してはブロックの寸法誤差が大きい割に純正メタルの種類が無かったり国産車ではあり得ないような問題が生じているようです。
単に純正に戻すオーバーホールではなくレースエンジンレベルでの精度と耐久性を求めて作業は進んでいきます。
この辺は非常に苦労しそうな事柄が多数ですけど任せているのが戸田レーシングですからね。
そうは言っても何とかしてくれるだろうとお任せしています。
平行してKSP側ではエンジン完成までに制御面の問題をクリアするべくお客さんの360を借りてV・Proの試作ハーネスを作ってHKSと共同で360モデナにV・Proを使えるように基本ソフトウェアを仕立てていきます。
次に戸田レーシングを訪ねるのは基本部品が完成した頃そして組み立て最後にエンジンベンチでテストその際はMOTECで制御を行いエンジン完成後エンジンはKSPに戻り車輌へ搭載されてV・Proで制御を行ってサーキットで実走行と言う事になります。
さて、完成はいつ頃だろうか。。