NSXエンジン下ろしメンテ作業その②

こんにちは!

今日はNSXエンジン下ろしメンテ作業その②です。。

では早速・・・

ヘッド側の整備に入る

初期型黒ヘッドのC30Aでは、アイドリング中リアバンクヘッドカバーからエアを入れてブローバイガスをフロントヘッドカバーからスロットル以降に吸気させるPCVバルブ機構になっているため大量にブローバイが通過するフロント側ヘッド内部の方が汚れが付きやすい。
後期赤ヘッドになるPCVはリアバンクに移動したためとこれが逆になる。

リアバンク側

フロントバンク側

ベルトカバーを外すとタイミングベルトが全て見える。
この時点で駒ズレやベルトテンションに異常がないかを確認。
過去の作業でベルトが一齣ずれて組まれていたり異様にテンションが緩いことがあり、事前にオーナーと打ち合わせして異常なアイドリング振動やパワー不足感など気になる点が有った場合にはコンプレッション計測と合わせてここで原因を確かめておく。

タイミングベルトを点検すると10万キロ程度では全く損傷がないことが分かる。
ベルト背面の文字こそウォーターポンププーリーとの摩擦で消えているけれど殆どの場合歯面やベルトそのものに異常は起きていない。

あと10万キロ走れるかと聞かれればおそらくは問題ないと思われるくらい。

クランクを上死点状態でテンショナーを緩めてタイミングベルトを外し、タイミングプーリーを外す。

クランクアングルセンサーの樹脂溶け出し・・
これはNSX定番の症状でセンサーに充填されている黒い樹脂が熱で溶けて流れ出す。
原因は果たして熱だけなのかは分からないけど、数万キロ走行した車輌ではほぼ確実にこんな感じになっている。

NSXのクランクアングルセンサーは2系統入っていて片方がエラーを起こしても動作するようになっているらしいがこんなになっても今までセンサー故障による実害は聞いたことがない。
だけど、これを見てしまったら交換したくなるのでエンジン降ろしメンテナンス作業では、センサーは定番交換部品にしています。

このあと溶けて流れてベルトに巻き上げられて周辺に飛び散った樹脂を除去するのはかなり大変な作業。

新品タイミングベルトを掛ける際に汚さないよう周辺を掃除する。
ここは洗い油とブラシを使って地道に洗浄し最後にパーツクリーナーで洗い流す。

メガネ型のゴムパッキンを外した2本のパイプはオイルクーラー&エレメントに繋がる部分ここにはゴミや異物が入らないよう注意。

順番通りボルトを緩め、カムホルダーを外しカムシャフトを4本とも外す。

カムの下に3個並んでいるのがVTEC機構が仕組まれたロッカーアーム。
両サイドが低速カム駆動用でセンターが高速カム駆動用。
スプールバルブから送られた油圧はこのロッカーアーム内部のピストンを動かし、3個が連結することで高速カム駆動となる。
カム左側先端に付いている黒いゴム部品がカムエンドシール。ここからのオイル滲み発生頻度が高いんだけどカムを外さないと交換不可能な部品。
エンジン降ろしメンテナンス作業でカムシャフトを外すのは、カムエンドシールとロストモーションスプリングを交換するため。

カムホルダーへオイルを送るオリフィスを外す。これはOリング交換のため。

カムホルダーに送られたオイルはカムシャフトにシャワーのように降りかけてカムとロッカーアームの潤滑を行う。オリフィスは各カムシャフトに対して1個あるので4カ所。

シーリングボルトを外し、適当なボルトをねじ込んでロッカーシャフトを引き抜く。
スプールバルブからの油圧はこのシャフトを通ってロッカーアームに伝わる。シャフトにはそのための穴が見える。

ロッカーシャフトを抜くとロッカーアームはフリーになるので3個をバラさないよう、ピストンが抜けないようにしておいてロストモーションスプリングの交換作業に入る。

ロストモーションスプリング
左が後期型         右は前期型
前期ではこのカートリッジ形状の中にスプリングが仕込まれている。
NSXはDC2と同様のVTEC機構の第一号を採用しているためこういった部分に関してかなり慎重な造りを採用している。だけど、バネ単体で良いなら当然その方が安価だし、スプリングとしての耐久性は高いからエンジン降ろしメンテナンスでは後期スプリングへの交換を必須で行っている。

ロストモーションスプリングは低速カム駆動の時にセンターの高速用ロッカーアームをカムシャフトに対して密着させて動作が追従するよう押しつけているバネ。
この部品は老朽化が激しくスプリングがヘタると高速用ロッカーアームがカムの動作に追従できず踊るため低速カム駆動時にヘッドからガシャガシャと大きな騒音が発生することになる。

バルブクリアランス調整を行ってもヘッドの騒音が解消しない場合ほとんどの場合原因はこのロストコーションスプリングのヘタり。
前期型ではカートリッジ型の中にスプリングが仕込まれているタイプだったけど、LEV以降の後期になってスプリング単体の形状に簡素化された。

当然ながらバネは外径が大きな方が耐久性が高く取れるし後期の方が単純形状なため部品も安価。
ただし、全長が若干異なるため前期ヘッドに使うためにはスプリングにスペーサーを入れて長さを適正値に合わせる必要がある。

部品洗浄

エンジンから外した部品を組み立て前に洗浄する。
洗浄に使うのは洗い油。特にカムシャフト周辺部品はオイル通路が細かく巡っているため目詰まりが無いように十分洗浄し高圧エアで通路を完全に通ることを確認する。



カムシャフトのエンドシール部分はスプールバルブに次いでオイル滲みが発生しやすいところなので古いパッキンを除去して下地を調整する。

ヘッドカバーは洗い油で洗浄後脱脂してマスキングして塗装する。
塗装は、シャーシブラックを薄く吹いてやるだけで結晶塗装の風合いを維持したままキレイに塗ることが出来る。こうすることでエンジンルームの美観が大いにアップする。
裏面に残った古い液体ガスケットもキレイに除去する。


作業も折り返し。次回はここからが本当の整備作業からです。