NSXエンジン下ろしメンテ作業その③
こんにちは!
今日もNSXエンジンメンテ情報の続きです。
それではどうぞ・・
作業も折り返し だけどここからが本当の整備作業。
バラした部品を調整しつつ組み立てていく。
ロッカーシャフトを入れて新品アルミワッシャに交換してシーリングボルトを規定トルクで締める。
カムエンドシールを取り付ける。ここで手を抜くとすぐにオイル滲みが発生するので完全に脱脂して液体ガスケットを塗布しエンドシールを取り付ける。
ロッカーアームやカムとの摺動面にエンジンオイルを塗布する。
カムシャフトにオイルシールを取り付けてエンドシールに差し込みつつヘッドにカムを載せる。
カムシャフトにもエンジンオイルを塗布する
カムエンドシール上側に液体ガスケットを塗布する
カムホルダーへオイルを送るポートのOリングを新品にしてカムホルダーを取り付ける。
カムホルダーを仮組みしオイルシールを着座点まで押し込みカムホルダーを順番通り指定トルクで締める。
ウォーターポンプ取り付けボルトを外しポンプを外す。
ブロックの雌ねじにネジロック剤が残っているためタップで修正する。
写真でガムテープを貼ってあるのはオイルレベルゲージの取り付け穴。
タイミングベルトを取り付ける下準備として出来る限りエンジン側を掃除してオイルや汚れ、クーラントなどが残らないようにする。
全ては新車製作時並のクリーン状態でタイミングベルトを汚さずに取り付けるため。
新品のウォーターポンプを取り付けるこのポンプは 途中から設計変更が入っていてポンプからリークしたクーラントがカバー外部に確実に排水されるようカバーと共に一部形状が変わっている。
そのため、ポンプとカバーはセットで交換することになる。
クランクアングルセンサーも新品を取り付ける。
新品ではこんな感じに樹脂が充填されているしかし、これも数万キロ走ると再び溶けて流れ出す。
溶け出しても正常動作しているので果たして新品にするメリットがあるのか分からないけど見てしまったら交換したくなる。
エンジン内側に付くタイミングベルトカバーも洗浄脱脂して新品のゴムシールを取り付ける。
ベルトカバーを取り付けて指定トルクでボルトを締める。
ベルトカバーのゴムパッキンはシリンダーヘッドに密着して、ブロック側からの水や異物の侵入を防止する構造。それにしても、タイミングベルトというのはここまで守られている構造に感心する。
クランクシャフトにフランジとクランクプーリーを取り付ける
カムシャフトにカムプーリーを取り付ける
プーリーを専用工具で固定してセンターのボルトを指定トルクで締める。
なお、カムカバー内部のボルト類に関しては万が一にでも抜けたりするとベルトに巻き込まれて大事故に繋がるため全数必ずトルクレンチで締め付けトルク管理して組み立てる。
これもエンジン搭載状態では非常に困難
新品のテンショナープーリーを取り付ける。
グリス封入タイプのベアリングを使っているため経年老化を考えてこれも必須交換部品
新品タイミングベルトを汚さないよう注意しつつ各プーリーに掛けていく。
どんなにキレイに掃除したつもりでも周辺には砂やホコリは残っているためビニール袋から開封した新品ベルトは時間をかけずに一気にプーリーへ掛けてしまう。
NSXのタイミングベルトは4本のカムをベルト1本で駆動しているため非常に長い。
フラフラさせていると周辺に触れて汚れる可能性が高いのでこの作業は二人で行った方が確実。
エンジン搭載状態でベルト交換作業を行うとほとんどの場合新品ベルトはこの時点でオイルやクーラントで汚れることになる。
ベストコンディションで組まれ10万キロ走った新車時からのベルトと新品だけどオイルで汚れたベルト・・果たして今後の耐久性に対してどちらが有利か?
部品を目の前に見て、自信を持って確実に作業ができること。
これがKSPではベルト交換の際にエンジンを降ろして作業する大きな理由。
プーリーにベルトを掛け終わったら、テンショナープーリーにスプリングを繋いで弛みを取る
クランクプーリーを上死点に固定した状態でカムプーリーのタイミング合わせ位置を確認する。
クランクプーリーが回らないよう固定してカムプーリーをフロント排気、吸気、リア吸気、排気と順番に逆転させて各プーリー間のベルトを張ってリアバンク排気プーリーとクランクプーリー間のベルトの弛みをテンショナープーリースプリングに吸収させる。
これでベルトに適正テンションがかかった状態になる。
これもエンジン搭載状態では困難な作業。
なにしろ取り付け状態のカムシャフトはバルブスプリングの反力で回転するので前のプーリーを固定しつつ対象プーリーを左回転させる必要がある。
弛みが取れて適正テンションになったところでテンショナープーリーを指定トルクで固定する。
オートテンショナーではないのでNSXのタイミングベルトの張りはこのときベストに調整するだけで次の交換時期まで調整することは出来ない。
タイミングベルトでカムシャフトを駆動する方式ではこのベルトテンションは非常に重要適正なテンションがかかっていないと駒飛びの原因になりやすい。
通常走行中にエンジンが逆転することはないけれど、車輌がスピンしたり、あるいは上り坂でエンストしたりすると瞬時にエンジンが逆転させられる場合がありベルトの張りに弛みがあると瞬時にベルトとプーリーがズレてコマ飛びする場合がある。
また、張り過ぎも当然NGでベルトに過大なテンションを掛けるとベルト周辺から唸り音が発生したりベルトの早期寿命を招いたりする。
クランクシャフトが上死点状態で各プーリーの合いマークが全て合っているか再度厳重に確認。
これで、タイミングベルトの交換作業は完了。
次回はバルブクリアランス調整からです。。^^