NSXクラッチ
こんにちは!
今日はNSXの話題です。
4月の岡山紀行で
OS技研を訪ねてクラッチの相談をして
新作クラッチに関して方向性を摸索していたんですが、
ひとつの方向として
より小径のディスクを使った
ツインプレートクラッチを試作してもらいました。
KSP仕様B-SSクラッチは
NSX用の社外クラッチとしては最もディスクの径が小さく
慣性の低減と切れの良さを求めて作ったんですが、
使っているディスクの摩擦材が
環境問題で入手できなくなり
現在入手できる素材を使った新作クラッチが求められていたんです。
これはOS技研に限らず
メタル素材を使う全てのメーカーで起きているはずの問題で、
環境問題で鉛を含んだ素材が使えなくなったため
代替え材料を使うと半クラッチ特性の悪化 ミート時のジャダーや切れの悪さなどが起こり
シンクロが弱いNSXはこの切れ具合の変化に非常に敏感なミッションなので
とりあえず 対処法としてOSに試作として在庫ストックがあった
旧来の素材を使ったディスクを使ってこの問題を逃げていました。
その間に新作クラッチの方向性を考えていたんだけど
私が求めるクラッチの特性としては
◎現行のB-SSクラッチは
チューンドC32Bでも全く滑らないので
伝達力は必要十二分だから多少スペックを落としても良い
◎ジャダーの少ない
滑らかな半クラッチ特性が欲しい
◎シンクロ保護と
素早いギアチェンジを行うため
メインシャフトと共に回転する
クラッチディスクの慣性をできる限り軽くしたい。
◎クラッチペダルの操作力は
できる限り軽い方が良い。
と言うのが主なモノでこれらを出来るだけ高い次元で満足出来るようOSに相談した次第ですが
試作品として完成したのが、摩擦係数が今までより若干高いメタル新素材を使って
これに依存して伝達力を維持しディスクをより小さい径のAタイプに変更して慣性を低減。
ディスク径が小さくなれば切っているときの踊りが減るのでジャダーも減るだろう。
当然 ディスク径に合わせてフライホイルから新設計してもらって
こちらは乗りやすさのため過激な軽量化はしない。
クラッチカバーは
軽いペダル操作を維持するため
圧着力の低いシングルスプリングのカバーを作ってもらいました。
OSのツインプレートクラッチには
ディスクの外径でA,B,Cタイプが有り
Aタイプは外径184ミリで
NSXの純正クラッチより若干小さいくらい。
実はTYIZ号には
B-SSのまま切れを良くする構造の試作クラッチが組まれていて
これの具合も良かったんだけど
なにぶん 使っているメタル素材が有限なので
いつかは対処しなければならないと思いつつも
切羽詰まってはいなかったんだけど
身近なお客さんで
まーぶるさんのNSXが
クラッチ不調になっていて新作を待ち望んでいたので
とりあえず
まーぶる号に試作クラッチを組むことにしました。
先日完成した試作品Aタイプツイン
クラッチユニットが小径化されたので
見るからにフライホイル効果が軽そう・・
こりゃ
ストリートじゃレスポンスが過敏すぎるかもな・・
と思ったんだけど
まーぶるさんは
サーキット走行が好きだからB-SSより軽い方向でOK。
と言うことなので
このまま組み込み。
平行して
LSDを現在の仕様に組み替え。
OSのスーパロックLSDは
初期の頃から比べると
劇的に進化していて
数年前の内部ディスクに比べると
素材も精度も格段に向上しているので
低速でUターンしてもLSDの作動音は殆ど無く
まるで純正デフのように滑らかに動作します。
もちろん
LSDとしての効きは維持していて
ヘアピン立ち上がりなどでは抜群のトラクションを発揮し
高速コーナーでは滑らかに滑ってくれるので走行抵抗が少なく
さらに
ホンダ純正ミッションオイルを使っても作動音がほとんど無く
良くもここまで追い込めた物だと感心。
数年前組まれたLSDでも仕様変更可能だから
クラッチ交換の際に
ついでにLSDを仕様変更する方も増えてきました。
全ての作業が完了し
近所を試乗してみると
まあ、全て予想通り。
クラッチペダルの踏力は素晴らしく軽く
純正クラッチよりペダル操作は軽いと思いますね。
空吹かしレスポンスは今までのB-SSに比べて10%くらい向上。
逆に
その分回転落ちは早くなっているから
シフトチェンジで気を抜いていると回転落ちが早すぎるかも。
まあ、これはフライホイルを重くすれば解決なんだから
量産時に考えれば良い。
肝心の操作性も予想通りで
素晴らしくギアの入りが軽い。
このくらいシフトチェンジが軽快なら何の文句もないかと思う。
急発進も試みてみたけど
純正のようなズルッと滑る気配は全くなく
やはり Aタイプメタルツインは必要十分な伝達力だと確認。
LSDも劇的変化で
今回はホンダ純正ミッションオイルを入れたのに
まったくバキバキ音が出ないのは驚き。
よし、このクラッチなら総合80点の評価を出せるな。
と思って納車
翌日
まーぶるさんはモテギの南コースで爆走してきたそうで
終始快調だったそうです。
フライホイル重量もこちらの方が断然気分が良くて好みだそうで
あとは
この調子が長期間続いてくれれば文句なしです。
翌日
再びOSと打ち合わせして
A-SSで伝達力が十分なら
もう一工夫して総合90点を目指すべく
再び試作設計を開始したところです。
今度は
A-SSのままOS初の構造にチャレンジで
フライホイル重量も
私の好みに合わせてもうちょっと重くする予定。
長らく悩んできたNSXのクラッチ
やっと解決策が見えてきました。