328作業記録
エンジン制御の古さから
完調が出しにくくセッティングの自由度もないフェラーリ328ですが
オーナーの依頼で現代的なV・Pro制御に変更する作業を受けました。
KSPに入庫時は
他所の業者でエンジンOHを行った直後の状態で エンジン本体は完調のはず。
だけど始動性悪くアイドリングもバラつく・・・
新車状態の328を見た事がないので これが果たして正常なのか分からないけど
他に何かトラブルを抱えているのか少々不安。
原因が制御関連の問題で、メカ的な部分以外であれば今回の制御系変更で完治してしまうはずなので
KSPでは吸気系と制御系の仕様変更を着手しました。
この記録は作業を進めながら追記していく形式で作っているので
我々も328に関して勉強不足なため 新事実発見と共に方向性や見解が変わってくる可能性があります。
なにせ328は初めて触るので 色々検証していく。

328のエンジンレイアウトは
横置きV8で
エンジン制御は機械式インジェクションのKジェトロ。
私がこの業界に入った時
すでに電子式インジェクションが当然だったので
この機械式インジェクションというのが驚異に見えた。
空気の流れをフラップで機械的動作に変更し
この機械的動作を燃料ディストリビューターに伝えて
燃料の増減を行うという
現在のセンサー、コンピュータ、アクチュエータによる制御を
全て機械的に行うという
およそ不安定と思われる方式に見える。。
点火系は昔ながらのシングルコイル&ディスビ方式で
これが前後バンク個別に制御しているようだ。

これはもちろん各シリンダーにコイルを配置する
ダイレクトイグニッションに変更予定。
スロットルはごく普通のシングルタイプ。(に見える)
 機械式インジェクションだけどリンケージの反対側にはスロットルセンサーが付いているから
なんらかの制御を行っているようだけど、この時点では不明。
インジェクターは
電子式を見慣れた者にとってあまりにも奇異な形状に見える・・
コネクターは無くて鉄パイプと樹脂パイプでフェルディストリビューターへ繋がっている。
サージタンクは
いかにも一昔前の形状で、8気筒エンジンとしては これはこれで良さそうだけど
今回は中古で8連スロットルが入手できたとの事で
ノーマルのサージ&スロットルは撤去して8連スロットルにする事にしました。

それにしてもデカイオイルエレメントだ・・・
車輌を預かっている時
翌日床にクーラントが垂れているのでチェックすると

シリンダー下面にクーラントが垂れている・・
どうやらホース類は全て中古みたい。
オイオイ大丈夫か・・・なんだか一仕事増えそうな予感だ・・
おまけにミッション側のオイル滲みがけっこう多い。
(328はエンジンの下にミッションがある2階建て構造)
エンジンブロック側はキレイなので
エンジンのみOHしたと思われる。


下準備としては
燃料系と点火系の撤去から開始する。エアクリーナボックスを外せば
巨大なエアフロフラップが顔を出す。
吸気はこの金色の板を押し下げながら下へ流れているんだけど
これは吸気抵抗としては凄まじいでしょうねぇ・・

フェルディストリビューターはボディに固定されていて
吸気はゴムのジャバラで
燃料は樹脂パイプでエンジンへ導かれている。
よく見ると
サージタンクへも1本燃料が行っているから
これはやっぱり
冷間時に燃料を増量するコールドインジェクターでしょうねぇ・・
キャブで言うチョークか。
Kジェトロに関してじっくり勉強するつもりはないから
このユニットは早々に撤去する。
外したフェルディストリビューターAssy。
それにしても
これでどうして正確に燃料供給が出来てるんだろう・・
各シリンダー個別の
シーケンシャルインジェクションは出来るんだろうか?
それとも全シリンダー同時噴射か?

現在のインジェクションでは
バルブが開くタイミングに合わせて
燃料噴射時期まで電子制御しているんだから

キャブレターやKジェトロから現代のDジェトロへ変更できれば
劇的にフィーリングアップが図れるのは間違いないでしょう。

それにしてもこのユニットには興味が尽きないけど
これ以上追求するのもやめておこう・・

キャブ車などをDジェトロに変更する際
まずは、どうやって制御コンピュータにクランクアングルを知らせるかが第一関門。
制御コンピュータはクランクアングルセンサーからの信号を元に現在回転数とピストン位置を知り
点火時期制御、燃料噴射時期制御などを行うから まさに制御の要になるのがクラセンというわけです。

センサーをクランクシャフトに付けるとかカムシャフトに付けるとかいくつか方法があるけれど
確実で故障の可能性が低い方法を取りたいので
今回の場合
エンジンから正確な回転が取り出せるカムシャフトにセンサーを付けるのが安全と判断。

328の点火系は前後バンクにディスビがあって、4気筒ずつ制御しているわけだけど
今回はディスビレスダイレクトイグニッションにする予定だから
リアのディストリビューターを外して、ここにクランクアングルセンサーを付ける事にしました。
フロントじゃなくリアにしたのは単に整備性良好だから。。
(後日 点火制御コンピュータがトランクで発見されたので
  V・Proなど制御系はトランクに装備する事にしたから クラセンはやはりリア側の方が好都合と判断)

で、やたら外しにくいディスビキャップを取ってみると
驚いた事にローターはカムシャフトに直付けされている・・
こりゃビックリ。 加工技術もさることながら
カムシャフトの先端をこんな形に作ってしまう発想がスゴイ。。

まあ、先端がこんな形状なら
アダプターとカップリングを作れば国産車のクランクアングルセンサーが取り付けできそうだ。

ディスビキャップを外してカムエンド周辺の関連を採寸し
カップリングとクランクアングルセンサーを付ける部品を設計して、いつもの機械工場に製作依頼する。
部品が出来てくるまでに
配線関連など進められるところを作業するので とりあえずこの部分の作業はしばらく休止。
ローターを外したカムシャフト端面
作業開始!

本当はノーマル状態でダイナモに載せてパワーチェックや空燃比制御の現状などの検証を行いたかったんだけど
エンジンOH直後で慣らしもしていないし
入庫時すでにアイドリング不安定など、このまま全開して大丈夫なのか何とも不安だったので
ノーマル状態で全開せずV・Pro仕様へと変更作業を開始しました。
ノーマル状態では始動性も悪く、始動後アイドリングが安定するまでバラバラ不安定だったけど、
これがどのように変化するか楽しみ。
というわけで、次にエンジンが始動するのはV・Pro制御での復活と言う事になります。
サージタンクを外してみると
やはり凝った構造で、内部にはファンネル形状が作られている。
サージタンクとインテークマニホールドの間には
ゴム製のガスケットがあるんだけど、
これはかなり微妙な造り・・
厚みのあるゴムパッキンに金属カラーが入っていて
インマニとサージが完全平行が出ていなくても
ゴムの変形で密着する構造だと思うけど、
やはり、経年老化でゴムの変形は著しく
金属カラーは変形しないからインマニとの密閉性は落ちていたでしょう。
もしかしたら
こういった部分からバキュームが漏れてアイドリング不安定だったのか?
本当はこういったパッキン類は定期交換した方が良いでしょうね。

サージに付けられたコールドインジェクターは
無造作に噴射するだけみたいだから、均等に8気筒に散らないだろうから
冷間時の各シリンダーの空燃比はメチャメチャでしょうね
これが暖機中の不安定の一因でしょう。
V・Pro制御ではもちろん全てのインジェクターを均等に噴射できるから
8気筒全て同じ空燃比で制御できます。


サージを外してインマニだけの状態。
うん、8連スロットルが付けばこんな雰囲気なんでしょうかね。

それにしても
ヘッドカバーとフレームを繋いで
エンジンの揺れ止めにする構造は大胆・・
国産車ではあり得ない構造ですねぇ。

リアヘッドカバーを真上から見たところ。
プラグ上下位置は微妙にセンターじゃないんだけど
ヘッドカバーのネジ位置を採寸して
イグニッションコイルの固定を考える。


イグニッションコイルは
日産の某車用を使う。
こちら業界の都合だけど、V・Pro制御する上で日産の部品は流用しやすい。
やはりチューニングパーツというのは
日産車との親和性が良いんですよね。
GT−Rとシルビアの影響は大きいと言う事でしょう。

イグナイター内蔵のコイルなので
電源とアースを繋いでおいて
コンピュータから信号を送るだけで自在なタイミングで点火できる便利なコイル。

DOHCヘッドでも
プラグホールの深さは様々なので、当然プラグまで届くコイルを使う必要がある。
コイルの防水と固定に関して考えて、
ブラケットの図面を書いて これも機械工場に製造依頼する。

どんな方法とデザインでコイルを固定するかは完成してからのお楽しみ。
こういった作業 けっこう楽しい。。
ところで
328のエンジン制御で、燃料系は機械式インジェクションのKジェトロだけど
点火系はどうやら電子制御されているようです。

ディスビがあまりにもシンプルな構造で、ガバナーもバキュームアドバンサーも無いから
これって、進角や遅角はどうやっているんだろう??と思ったら

フライホイルにクランクアングルセンサーが取り付けられていて、
その信号を元に点火はデジタル制御されているみたいです。

じゃあ、その制御をしているコントローラーはどこ?? と探し回ると
トランクの床に裏返しで入っているのを発見。
床に蓋があって、蓋の裏にネジで取り付けられているから おそらくは浸水に対する対処だと思うけど
そもそも水が簡単に入り込むところにこういったモノがあるのがちょっとスゴイ。。
エンジンルームからの配線取り込みは
国産車のように厳重にグロメット防水で作られてはいない。。

まあ、レイアウト的にちょうど良いからエンジンからV・Proまで一連のハーネスはここを通して
V・Proはトランクに置く事にしました。

当然純正の点火制御ユニットは撤去。
タコメーターが動かなくなる心配が残るんだけど、とりあえず作業を進めてみる事にする。

ところで
純正のスロットルを検証してみると、一応ポジションセンサーは付いているし
スロットルの口径は66ミリほど有ります。
NSXのノーマルスロットル口径は64ミリで 拡大して350馬力+αに対応するのが66ミリだから
328のノーマルスロットルは意外に大口径です。
8連スロットルにしなくても このスロットルのままV・Pro制御に変更するだけでも劇的に性能向上すると思いますね。

今回はDジェトロ制御に変更するからKジェトロのインジェクターは使わないんだけど、
初めて見る機械式インジェクションのインジェクターとはどんなモノなのか興味があったのでインマニから外してみた。。
それにしてもカーボンでベットリ・・ インマニ内部もブローバイで真っ黒
インジェクターのOリングも新車時から無交換と思われるので
こういった部分からも吸気がリークしていたのかも知れない。
それにしてもこれがインジェクターなんですねぇ・・・ 不思議な形状だなぁ。。

後日
オーナーの話では 多連スロットルV・Pro化が決まっていたのでサージ&スロットル側はOHせず
無駄な費用を抑えるためパッキン類も交換しなかったそうです。
なるほど、それなら納得ですね。
おそらくはフェラーリのパッキン類は意外に高価なんでしょうねぇ・・
TYIZ HPへ戻る
これが点火コントローラーだと思われる。
オーナーが持参した8連スロットルのキットに
かなりの部品欠品がある事が分かったので
これの部品を手配をしている間に
電気配線を進める。
これは工場長が担当してくれている。
汎用V・Proハーネスを流用して
まずはトランクからエンジンルームへ配線を通していく。



V・Pro側は専用のコネクターが付くけど
エンジンルーム側では
その後の整備性を考えて
各センサーやインジェクター、点火コイルなどへの配線には中継コネクターを入れて
エンジン側とボディ側で分離できる構造に作っていく。
こうする事で エンジンを降ろす場合などでスムーズにスムーズに作業を進める事が出来る。
ところでこのコネクター 良い物を見つけたみたいです。
WURTH(ウルト)というメーカーでドイツ製らしい。
フェラーリの純正コネクターを探していて見つけたモノだそうで
小型で防水で黒でカッコイイ。接点容量も十分で信頼性抜群に見える。
コネクターの割にはちょっと値が張るけれど、防水も無いチャチな白いプラスチックコネクターは避けたかったんだよね。。

ところで今回使うのは
34GT−R用のクランクアングルセンサー。
以前レースカーのハコスカにV・Proを付けた時は
ディスビを改造してSR20DET用クラセンを使ったんだけど
今回はスペースもあるし
その後の整備性を考えて
カムシャフトとのアダプターを作る事で
GT−R用を無加工で使ってみる事にしました。
この34R用はカムシャフトとのカップリング部分が良くできていて
多少の同心度ズレやカムとセンサーに平行度差が出来ても
カップリングが位相差を吸収してくれる構造になっています。
まさに、今回のような用途にはもってこいのクラセンなんですね。

ところでクラセンを開けてみると
内側に大きさの異なる6個穴 外周に1度刻みで360個の穴があいた
極薄の金属板が中心軸と一緒に回転している。
これを光学ピックアップで読む事で
カムシャフトの回転に同期してピックアップが信号を出力し
倍の回転数で回るクランクシャフトの
上死点とクランク位置を正確に検出する。

V・Proはこの信号を元にエンジンの回転情報を得て
点火時期制御や燃料噴射時期制御を行うという訳ですね。


水漏れ修理

エンジンからの水漏れは
どうやらウォーターポンプ付近から漏れているみたいなので
取り外してチェックする事にしました。
これは、メカニック内野が作業。

これが328のウォーターポンプAssy
なんとも芸術的なカタチをしている・・
エンジンOHでポンプも交換したとの事だったけど
Assy交換じゃないみたいですね。
国産車ではポンプAssyが安価だから丸ごと交換しちゃうけど
フェラーリでは内部OHが普通なのかも知れない。

ポンプを分解してみると
なるほど、ペラは新品ですね。
どこから漏れているのか判断が付かないので
スタッドボルトを抜いて合わせ目をオイルストーンで摺り合わせする。

で、修正したポンプ。
パッキンとOリングが届くまでしばし作業中断。

それにしても
あまりにも無造作なカタチのインペラですねぇ・・
最近こんなにも単純なプロペラのポンプは見ませんよね。


ところで328は
ポンプから水が漏れると直行でタイミングベルトに入り込む構造。
今回はジワジワ滲んできていたところだったから
まあ、実害はなかったけど
負荷をかけて水圧上がって大量に漏れたら
タイミングベルトが危なかったかも知れない。
やはり、入庫時にダイナモでパワー検証しなくて良かった。。

メカニック曰く、
まあ、タイミングベルトカバーも外さずにポンプが交換できるんだから
良心的な構造だよね・・
まあ、そう言われてみればそうか・・前向きに考えましょう。。

これで水漏れが治ってくれれば良いんだけど。

加工業者に製作依頼しておいた
クランクアングルセンサーのアダプター類が出来上がってきた。
右のカバーは
フロントのディストリビューターを外したカムエンドに取り付ける。

カップリングのアダプターは
位相違いで2個作ってみた。
どうも
カムシャフトとクラセンの位置出しで悩みそうだったので
180度違いで2個作って
都合の良い方を使うことにする。

これはクラセンのカップリングと常時高速回転伝達する部品だから
熱処理屋さんで焼き入れしてもらった。

カップリングのアダプターはカムシャフトエンドにネジ止めして
クランクアングルセンサーとはこんな感じで噛み合う。

実際にはこんな感じで
カップリング部分はケースの中で噛み合って回転する

8連スロットルのリンケージ部品が届いたので仮合わせしてみる。
そして配線を作っていく
スカイラインの整備書を参照しているのが笑える。。

インジェクターは
オーナーが持ち込む予定だったんだけど
入手できなかったそうで
今回はKSPで手配したインジェクターを使うことにする。
使いたいインジェクターと
スロットル&フェルデリバリーパイプの位置関係が合わないので
デリバリーパイプをフライスで加工。
身近に工作機械があると便利だ。

今回使うのは
ER34スカイラインのインジェクター。
8本使うのでかなりの馬力まで対応できるはず。
出力を考えれば
本当はこんな大容量はいらないと思うんだけど
サイズ的に好適だし、
現在の大容量インジェクターは霧化特性が良いので
絞って制御させても何の問題もないでしょう。

それにしても
最近のインジェクターは小型で素晴らしい
高抵抗なので
V・Proでダイレクトドライブできるから流用には便利。


スロットルとフェルデリバリーパイプ
インジェクターを組み合わせた状態。

見事にバッチリ組み立てできる。
Oリングもジャストサイズ

それにしても
インジェクターを組み込むだけで手間がかかるねぇ。

平行して
アイドルエアバルブの製作
アクセルオフ時にはスロットルは全閉し、
アイドリング時にはこのバルブからエンジンにエアを供給する。
バルブはV・Proで制御して 目標アイドリング回転数になるようエア流量をコントロールする。
バルブは同じくGT−R用を使うとして、
取り付けるブラケットはアルミ板を切り抜いてニップルを溶接して製作。


取り付け位置はこんな感じ。

組み立てていて
また問題発生。

スロットルポジションセンサーも日産純正を使うつもりなんだけど
スロットルから出ているシャフトが短くて
センサーを駆動できない。
328純正のセンサーでもこのスロットルには取り付けできないから
本来このキットでは
いったい何のセンサーを使えと言うんだろう??
まあ、制御上 勝手が分かる国産用が使いやすいし
アダプターを作ってセンサーを付けることにして
また部品図面書いて機械加工業者に製作依頼。

フロントのカバーはこんな感じに付く。

ウォーターポンプ修理をしたついでに
アルミパイプを溶接延長してボスを作って
水温センサーを取り付け。

エンジンのDジェトロ制御で必要な入力は
クランクアングルセンサーによるクランク角度と回転信号。
圧力センサーによる吸気管圧力
スロットルポジションセンサーによるアクセル開度
エアクリーナ周辺の吸入空気温度センサー
そしてエンジンの温度を知る水温センサー。

ここまでの作業で
やっと制御上必要なセンサー類の取り付け目処が立ってきた感じ。

まだまだ作り込まないといけない部品は多い。
まあ、キットの組み立てじゃなく
ほとんどがワンオフなので
手間と時間がかかるのは仕方がないところ。。

でも、カッコ良くて芸術的なエンジンルームにしようと思う。


作った部品は
この2点
延長シャフトはステンレスで
センサーのブラケットはアルミで製作。

スロットルのシャフトに延長シャフトをフォロセットで取り付けて・・

ブラケットをスロットルにネジで取り付けて
そこにスロットルポジションセンサーを取り付ける。
回転方向の微妙な誤差を調整できるようにしたんだけど
ピッタリセンターで落ち着いた
うん、カンペキカンペキ。

イグニッションコイルのブラケットがアルマイト処理から上がってきた。
今回は横方向ヘアラインにガンメタのアルマイトにしてみたんだけど、
思ったより地味でしたね・・
まあ、赤や青の原色系だと安っぽく見えるから、これはこれで渋くて良いかも。
時間的余裕があったら、あらためて飾り穴を加工したり文字を彫刻してみても良いかも。

ヘッドカバーボルトにスタッドを立てて5ミリのアルミ板でブラケットを作ってコイルを固定。
コイルとヘッドカバーの間は、適当な防水ゴムが見つからなかったので
寸法指定してゴム加工業者に作ってもらった。
材質はシリコンゴム。これで防水絶縁カンペキ。。
スロットルを仮組みしてインジェクターの位置関係などもチェック。
コイルとインジェクターのハーネスも予定通り まるで日本車の純正のように完成。

フロントバンクも
リア同様にコイルを配置。
しかし、328のフロントバンクプラグ交換は大変ですね・・
今回の作業で
純正サージタンクや色々邪魔物が無くなるので
いくらか楽になると思うけど、
それでも整備性は悪そう。
まあ、Kジェトロに比べればV・Pro制御の方が
プラグのコンディションは長期間良好に保たれると思うけど。

フロントバンクのディスビ取り付け部には
アルミ削り出しで作ったカバーを
同じくガンメタアルマイトして取り付け。

ノーマルエアクリーナへのダクトを外すため
一時的に右リアインナーフェンダーを外す
インナーフェンダーを外すと
燃料配管などを行う上で作業性良好

328の燃料ポンプは
エンジンルーム左側の
下部フレームに取り付けられている。
燃料ポンプはごく普通のアウトタンク式直流モータータイプ。
フィルターも見慣れた形状
だけど、ポンプの横にある円筒形の部品が謎・・
レイアウトから考えて
おそらくは燃圧ダンパーだと思うけど
こんな巨大なパルセーションダンパーは初めて見る。

インジェクションのエンジンでは
インジェクターが噴射した瞬間
燃料圧力が低下するため、スプリングダンパーを入れて
燃圧の脈動を抑えるんだけど、
もしかしたらKジェトロでは
全気筒同時噴射なのか? だから巨大なダンパーが必要?

それとも、負圧ホースが繋がっているから
これは燃圧レギュレーターなのか?

まあ、存在理由は分からないけど
今回は制御のフル変更なので
これは撤去。

十分な燃圧を確保できるポンプで
各気筒個別タイミングで燃料噴射する
シーケンシャルインジェクションならダンパーは無くても実害は起きない。

燃料ポンプは
ノーマルの仕様がよく分からないので交換する。

今回使う予定の燃料ポンプはチューニング業界では定番だった
ボッシュのアウトタンクポンプ。
これはかつてポルシェターボの純正品だったらしい。

高燃圧高流量で
1機で400馬力オーバーに対応する。
一昔前のチューニングカーでは
このポンプを並列に2機回して1000馬力近いターボチューンを行っていた。

余談だけど
フロントバンクヘッドのブローバイホースを外したら
中に網のようなモノが入っている。
オイル飛沫が飛び出さないように配慮だと思うけど
これはおもしろい
普通はヘッドカバー内部にブローバイのセパレーターが仕組んであるんだけど
そういった構造がないのかも。
だからヘッドカバーが薄いのか?

純正ポンプを車輌から外して分解する。
高圧側はバンジョウで接続してあるのを見ると
ノーマルはかなり高燃圧なんだろうか・・

バキュームタンク製作

タンクはアルミ板を切って溶接して組み立て。
アイドリングエア供給用とブレーキバキューム&燃圧制御用に
二部屋構造のタンクにする。
これはメカニック内野が作った・・
それにしても物々しいカタチ・・ 「ハウル!」と呼ぶことにした。。

ところでなぜタンクを作るか?
メーカー純正で多連スロットルのインジェクション仕様エンジンでは
基本的にアイドリング時では各気筒ともスロットル全閉。
アイドリングに必要なエアは別経路で各シリンダーのインテークマニホールドに各気筒同量を供給する。

キャブレターの頃は
各キャブレター間で多少同調がずれていても、大きく開いているところは吸気も燃料も多いので
各気筒の空燃比は大きくズレなかったけれど

インジェクション制御では
基本的にインジェクターの噴射量は各気筒で同じになるため(一応気筒間補正は出来るんだけど・・)
アイドリング時に各気筒のスロットル開度に差が生じると気筒間で空燃比のズレが生じ、
8気筒で濃いところと薄いところが出来てしまう。
そうなると、長時間のアイドリングではプラグがかぶったりアイドリング不安定を招く。
これを避けるためには
アイドリング時には別経路で各気筒にアイドリングに必要な同量のエアを供給する必要がある。
そしてそのためにスロットルは全閉状態で、タンク経由でエアをインテークマニホールドに供給する。
その供給するエアの量と燃料の量ををコンピュータ制御することで、
ファーストアイドル エアコンアイドルアップ 減速時の燃料カット&復活制御などを円滑に行うことが出来るというわけです。
そしてもちろんそれらの制御は全てV・Proで行う。

また、サージタンクが無い多連スロットルでは
ブレーキの倍力装置(マスターバック)へ負圧を供給するため、
数気筒の負圧を集合させたタンクを設ける必要がある。
このアイドリングエア供給と倍力装置への負圧供給は一体のタンクで行う場合もあるけれど、
個別にした方が安定性が良くなることは容易に想像できるので、今回は2室構造のタンクにした次第です。

取り付け位置は前後バンクの間 裏返しに付くので「足」は見えなくなる。

タンクの下面を鏡面に磨いて取り付けて
インテークマニホールドとシリコンホースで繋いでいく。

8気筒まとめたタンクの部屋には日産のAACからアイドリングエアを供給する。

もう一部屋の負圧は
燃料圧力制御バルブ(フェルプレッシャレギュレーター)とブレーキマスターバックへ。

ターボじゃないから
ホースには負圧しかかからないので接続は容易。

まだ燃料関連など作業途中だけど
電気配線がほぼ完成しV・Proが繋がったので、
点火の動作チェック。
クランクアングルセンサーを手で回転させるとプラグはちゃんとスパークする。

日産RB26用のクランクアングルセンサーは逆回転させても信号はきちんと出るらしい。
今回 カムのエンド側にセンサーを付けるため、センサーが逆回転になることが一つの懸念だったんだけどこれで一安心。


と、このあと
クランキングして気付いたんだけど
このエンジンはクランクシャフトが1本でクランクプーリーは前後バンクで分かれていてこれをギア駆動しているらしく
カムとクランクは逆回転していることに気付いた。。
そういえばエンジンのイラストは見て知っていたことなんだけど
今までクランクとカムが逆回転するエンジンを扱ったこと無かったですからね・・先入観でした。。
そんなわけで
カムが逆回転していると言うことは、エンド側に取り付けたクランクアングルセンサーは正転と言うことになるわけだ。
まあ、どっちでも制御できることは分かったんだけどね・・

点火確認

燃料配管経路を作っていく。
フィッティングはアールズを使って、ホースはサムコの燃料ホース。
高価だけど、このホースは非常に信頼性が高い。布入り耐圧シリコンホースの内側に耐油ゴム層を設けてあって
耐燃料、耐圧、耐摩擦、耐熱などトータルの耐久性で優れている。
ポンプは予定通りボッシュ製に交換し、燃料フィルターは日産純正部品に交換。
フィルターを出た高圧燃料は分岐して前後バンクのインジェクターへ向かい、
フェルデリバリーを抜けた燃料は再び集合してサードのプレッシャーレギュレーターへ入り
ここで燃圧設定を行って余剰燃料は右の燃料タンクへ帰っていく。


全体のレイアウトが固まってきた。
まだ、ヘッドからのブローバイ配管など完成していないけど、エンジン始動テストのため抜いておいた燃料を入れる。

とりあえず、V・Proに暫定のデータを入れてエンジン始動!
問題なくエンジンは目覚めて安定してアイドリングしている。
まだかなり燃料は濃いようだし
アイドルエアバルブの制御も追い込んでいないけど、
ノーマルのKジェトロの頃に比べたら劇的に始動性良好!
セルを回すと
「キュルルルル・・ボン!」と、いとも簡単に始動してファーストアイドルも安定する。
今日では当然のことなんだけど、今までが非常に不安定だったので
オーナーは喜ぶことでしょう。

それにしても
当然だけど多連スロットルはレスポンスが良い。
アクセルを叩けば即「ワォン!」と反応する。
このレスポンスもノーマルとは劇的に変わっている。

始動性、バキュームタンク容量による制御面、アイドルエアバルブの効果など
製作したハ−ド面を確認する。
もう一つの懸念事項として
ブレーキマスターバックのバキューム量とタンクの関係があったんだけど
これも問題なくクリア。

多連スロットルを安定して街乗り仕様に仕立てるには実は色々あるんです。

そして、色々作った部品がきちんと機能していることを確認。
カムシャフトのエンドに付けたカップリングが正確にクランクセンサーを駆動し
ブラケットで延長したスロットルセンサーも正常に信号を出してくれている。
8個付けた日産のイグニッションコイルも正確にプラグに火花を散らせている。
うん、ワンオフ部品がきちんと動作しているのが分かると嬉しいモノだ。

一時的に配管経路に分岐を付けて
燃圧計を取り付ける。
プレッシャーレギュレーターを調整しイニシャル燃圧を決める。

インテークマニホールド圧力に対して常に燃料圧力を一定に保つため
プレッシャーレギュレーターは
例のバキュームタンクの圧力に従って燃料圧力を変化させる。

これは一度設定してしまえば終わりなので
セッティング完了後 燃圧計は取り外す。

懸念事項のひとつだった、タコメーターの動作だけど
やはり、ノーマルの点火制御ユニットを取り外すと
タコメーターは動かないことが分かった。
コネクターを繋ぐと、V・Pro制御でエンジン始動時でもタコメーターは動く。
やはり、このユニットがフライホイルのクランクセンサー信号を拾って
点火制御したりメーターを動かしたりしていたんでしょう。
そんなわけで、制御をV・Proにした現在 制御面でこのユニットは不要なんだけど
元通りの場所に取り付けることになった。

制御ユニットは付けないとマズイということになったけど
純正の点火コイルは不要と分かったので、
純正のコイルがあったところにブローバイキャッチタンクを作ることにした。

金色の箱がV・Proだけど
これの置き場所はこの付近で考える。
V・Proはモジュラーケーブルからシリアル変換して、
さらにUSB変換してノートPCに繋ぐ。。


初始動直後の動画をアップします
http://ksp-eng.co.jp/tyiz/328/video1.wmv
まだ暫定データでの始動直後なので
空燃比やアイドルエアが適正でないため不安定ですが
このあと、始動性とアイドリングに関しては
ほぼ問題ないレベルまで追い込み完了した。
で、本日の作業は終了。

エンジン始動テスト!

オイルキャッチタンクの製作
イグニッションコイルが不要になったので
コイルが有ったスペースにキャッチタンクを作って取り付け。
アルミ板を切って曲げて溶接してタンクを作って
前後バンクのブローバイガスをタンクに入れる

アイドリングと軽負荷のデータを修正して
とりあえず走行可能になったので
エンジンフード無しで近所を試乗。

8連スロットルになったんだけど
高さは意外に抑えられていて
エンジンフードは問題なく組める。

当たったら加工するつもりだったんだけど
フードとスロットルのファンネルは数センチのクリアランスがある。


入庫時の状態がエンジンOH直後だったので
とりあえずエンジンの慣らしをするため作業はここで一段落させて一時納車することになりました。
現状までで
エンジンの始動性とアイドリング安定性に関してはほぼクリアで問題なしなんだけど
始動直後に電圧が低めで不安定になる症状があり
身近に事例がないから
これが328のオルタネーターの特性なのか故障の前兆なのかが分からず
とりあえず電圧不安定はあらためて検証することにしました。

始動直後に電圧が低いため点火の不安定を伴っているようで
始動後 数回アクセルをあおると電圧が上昇し安定性が上がる。
特に冷間時に顕著なので
あらためてこの問題も解決したいと思います。
もし、オルタネーターの特性と言うことなら 日本製のオルタネーターに交換しちゃうのも手だと考えます。

http://ksp-eng.co.jp/tyiz/328/video2.mpg
これが最終段階での始動性とアイドリング 空吹かしレスポンスの状況。
入庫時のKジェトロ状態からだと劇的に始動性も安定性も向上しました
タコメーターの指針動作が遅くて 回転上昇に追従しきれていないみたい。

セッティング開始!
エンジン慣らしから帰ってきて
オイル滲みがあったエンジンを修理し
シャーシダイナモ上で全開領域のセッティングを開始。

エアクリーナは
ファンネルに被せるスポンジタイプを使用。

セッティング開始して
早々に270psを越えて280psをマーク!



エアクリーナを取り外してみると288psを記録。
シャーシダイナモ上で
エンジンフードをを開けた状態でエアクリーナレスが最高出力記録でした。

カタログデータは270馬力ほどに対して実馬力で288馬力。
ノーマルで計測していないけど、
まずカタログデータは出ていないだろうから
スロットル変更と制御変更で大幅パワーアップが得られた事になりますね。

ところが
エアクリーナを付けてフードを閉じて計測すると
思い切りパワーダウンして246ps。

やはり、エアクリーナエレメントとフードが近すぎて
吸気制限しちゃうみたいです。


エアクリーナレスでフードを閉じた状態なら
ここまでパワーダウンはしないので
とりあえず、サーキット走行などでは
エアクリーナレスフード閉じで走行すればOKと言う事で
今回の一連の作業は一段落としました。


二つのグラフを重ねてみると
5000rpm以上で大きく差が開くのが分かる。

反面
4000rpmまではエアクリーナレスフード開き状態と差がないので
一般道を走るならほとんどパワーの差を感じないだろうから
通常街乗りでは
エアクリーナ付きで走行する事にして
フードを加工するなど対処法を考える事にしました。


フェラーリでは初のV・Pro仕様チャレンジで
制御関連に関して部品製作など色々ありましたが
大きな問題もなく無事に終了。

入庫時に比べれば、始動性アイドリング安定性など素晴らしく向上しました。
やはり、旧車に最新エンジン制御というのは効果が大きいです。

セッティング中データ変更しつつダイナモ上で走行している音を聞いても非常に安定していて
極めて安定して出力を上げていき、カタログデータを大きく越える288馬力を記録したところで全開領域セッティングは完了。
街中での通常走行領域をセッティングして一連の作業は完了になりました。

最終的な仕上げは
フードの対策などを行って完成としたいので
この作業記録はもう少し続く未完成状態としてひとまず終了です。